六味丸や八味丸などの補腎薬に甘草が含まれていない理由
- みやわき健康薬局 宮脇 崇
- 2025年12月5日
- 読了時間: 7分
こんばんは^^昨日あたりから急に寒くなりましたね。昨晩、ジャイアンから「アイス買って来いよ」と言われてウエルシアに買い物に行ったのですが、寒さでどうにかなってしまうかと思いました(パジャマ+フリースという服装)。
これまでの寒さとは全く異なりますので、気を付けながら生活してまいりましょう。
さて、今回のブログのタイトルは「六味丸や八味丸などの補腎薬に甘草が含まれていない理由」になります。
ややマニアックな内容ですが、理由が分かることによって「あなたの漢方ライフがより良いものへと変化」すること間違いなし!なので、ぜひ最後までお読みくださいませ。
まずは用語のご説明をさせていただきます

✅補腎薬とは?
補腎薬(ほじんやく)とは、漢方医学において、生命活動の根源的なエネルギーを蓄えているとされる「腎(じん)」の働きを補う漢方薬です。六味丸や八味地黄丸、杞菊地黄丸、知柏地黄丸、八仙丸などの「地黄丸系」と呼ばれる漢方薬が代表薬になりますが、その他、鹿茸や冬虫夏草、亀板、ゴウカイ、海馬などの生薬やこれらを含む漢方薬も補腎薬に含まれます。
✅腎とは?
①成長・発育: 骨や歯の形成、子供の発育に関わる。
②生殖・ホルモン::性的な成熟やホルモンバランスの調整に関わる(アンチエイジングの鍵とされる)。
③水分代謝:体内の水分の調整に関わる(腎臓の機能に大きく関わります)。
④老化:加齢に伴う体力の衰えや不調(頻尿、腰痛、かすみ目など)と深く関係する。
以上主に①~④の働きを腎といいます。この腎の働きを補うのが補腎薬ということになります。
✅甘草とは?
甘草とは漢方薬に最も多く配合されている生薬になります。諸薬を調和するという目的で入っていることが多く、主に①個性の強い作用や副作用を緩和する ②胃腸の保護 ③味の調和 ④体を潤すなどの目的で使われています。
甘草の働きとして痛みの緩和、炎症の抑制、解毒、胃腸の働きを向上させる、保水力を高めるなどがあります。芍薬甘草湯が有名ですが、この処方の配合目的としては筋肉のけいれんを抑制して痛みを止める、になります。
ではなぜ、補腎薬には甘草が含まれていないのか?

甘草は諸薬するという目的で、漢方処方の約70%に含まれていると言われています。
たまに甘草を服用することが出来ない…というお客様がいらっしゃるのですが、その場合には、選ぶ漢方薬にめちゃくちゃ難儀します。というか、ほぼ無理(選ぶことが不可能)な状況になります。
この甘草はなぜ補腎薬に含まれていないのでしょうか?
その理由についてご説明します。
✅六味丸や八味丸などの補腎薬に甘草が含まれていない理由
コルチゾール代謝に問題を発生させる可能性があるから
水分代謝を乱す要因になる可能性があるから(六味丸や八味丸などの補腎薬は水分代謝の要である腎機能調節がメインの機能)
順番に説明しますね。
①甘草には「11β-HSD2」という酵素(腎臓に存在する)を阻害するという働きがあります。
11β-HSD2という酵素にはコルチゾールを不活化させる(活性を失わせる)という働きがあります。甘草が入ってくると、11β-HSD2の働きが抑制されるので、その結果、本来分解されるはずのコルチゾールが分解されない→ 減らずに残ってしまう(体内に増える)という状況が作り出されてしまいます。
要するに、ストレス時に分泌されるコルチゾールが体内にて増加しやすくなる、ということになります。コルチゾールには血圧を上げる(ナトリウム保持)、脳の覚醒させる(イライラしやすくなる)、血糖値の維持、 抗炎症・免疫調節、眠りを阻害するなどの働きがあるので、適量ではさほど問題ありませんが、過剰になってしまうと高血圧やメンタルの不調、不眠、血糖値が不安定になるなどの問題を発生させます。
直ちにこのような作用をもたらすということではありませんが、長期に渡り大量の服用を続けたり、大量でなくとも甘草を代謝する肝臓や腎臓、腸内細菌の機能が低下していたりすると、体にとって良くない作用をもたらすと共に、補腎薬の働きを乱すことになるので「省かれている」と想像します。
①六味丸や八味丸には補腎という働きがあります。その補腎の中には「現代医学の腎臓の機能」も含まれます。現代医学の腎臓の機能として血液のろ過・老廃物の排泄、体内の水分量・電解質バランスの調整、そしてホルモンの分泌(血圧調整、赤血球生成補助、骨代謝サポート)があります。補腎薬はこの働きを助けるのですが、その中の体内の水分量・電解質バランスの調整(以下、水分代謝)に対して甘草が問題を発生させる可能性がある(①で説明)ので配合されていないのです。
甘草には中医学では「湿をためやすい性質がある」とされており、現代医学でも、①で説明したように「ナトリウム保持、カリウム排泄、むくみを引き起こす原因になることがある、高血圧の原因になることがある、偽アルドステロン症のリスク」などの水分の停留を引き起こすリスクがあることが明らかになっています。即ち、水分を保持するという働きがあることから、全身の水分代謝の調整を一方通行にさせてしまう傾向があるので使えない、ということになります(腎臓は体内の水分量を調節しています。その働きを乱してしまうリスクがあるということですね)。
さらにもっと大事になるのが「補腎薬は一般的に老化に伴う諸症状の改善や虚弱体質の改善」として使われることが多いので、長期に渡り用いることが多い漢方薬になります(半年~数十年)。このように長期に渡り服用し続けるということは、「なるべく体質の偏りを引き起こす生薬は用いないようにする」というのが原則となり、水分停留に働く甘草は使いにくい生薬となります(特に代謝の落ちている高齢者に用いる際には)。
以上になります。
さらにちょっとだけ補足しますね。
例えば六味丸という漢方薬には6種類の生薬が含まれています。
地黄、山薬、山茱萸、茯苓、沢瀉、牡丹皮の6つなのですが、これらは補剤(心身の機能を補う)が3つ(地黄・山薬・山茱萸)、瀉剤(邪を追い出す)が3つ(茯苓・沢瀉・牡丹皮)がバランスよく配合されています。ここに割と強力な補剤である甘草が加わるとどうでしょう?
恐らく、バランスが大きく乱れて(長期摂取だとさらに乱れる可能性が出てくる)、少なくとも万人が長期に渡って安心して用いられる処方にはならないでしょう。(とはいえ、個人に合わせて甘草を加えるという選択肢は当然あります)
さいごに

現代にて名前がついている漢方薬というのは「ある程度安全に多くの人が用いることができる」ような「汎用処方」となっています。実際の漢方の本場では、例えば補中益気湯などの型にはまった処方がそのまま使われるのは稀。多くの場合、その人の体質や症状によって加減(自由な生薬の組み合わせが行われている)されています。
よって六味丸や八味丸などの補腎薬に甘草が入る例もありますし、芍薬甘草湯などを一緒に用いる場合もあります。なので、絶対に入らない、入ったらダメということではありません。
また、ここまで読んだら「甘草って怖い」「なぜそんな危険な生薬を使うの?」と思ってしまうこともあるでしょう。
甘草を始め生薬には必ずといっていいほど「薬効」があります。甘草には先ほど説明したように「体液を停留させるので体液バランスを乱す」という働きがありますが、一方で心身の潤いが足りない人にとっては薬になります。このように使い方によって薬にもなるし、毒にもなるということになりますね。これはどの生薬でも合成医薬品でも同じです。
大事になるのはその人の体質や症状に合っているかどうか、そして使用する期間を守ることです。
※甘草は一般的に長期利用目的の処方には少なく、短期利用向けには多めに含まれています。
さらに、「このような副作用があるから直ちに危ない」ではなく、用いる量によって危険かどうかは異なるというのがありますので、使われている=怖いと決めつけることのないようにお願いします。甘草が入っている漢方薬の多くは、特に問題のない量となっています。危険なのは諸説ありますが1日3g以上飲み続けることです(もちろん体質や年齢、代謝する臓器の機能などによって異なるので一概にはいえません)。一つの基準となりますので覚えておいてください。
※甘草が多くなりすぎるとむくみ、血圧上昇、筋力低下、脱力(だるさ)、筋肉のけいれん、不整脈(ひどい場合)などが生じます。これらが出た場合は速やかに服用をやめて医師に相談するようにしてください。
今回は以上になります。気になることがある場合にはぜひみやわき健康薬局までご相談くださいませ。
良い週末を^^
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